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Ascent/アセント

Ascent/アセント
 

フィオナ・タン/デジタル/80分/2016(オランダ/日本)
 
脚本:フィオナ・タン/プロデューサー(アンチテーゼ・フィルムズ):フィオナ・タン/声:ヒロシ=長谷川博己、メアリー=フィオナ・タン/製作:IZU PHOTO MUSEUM、ネザーランド・フィルム・ファンド、ワコウ・ワークス・オブ・アート(東京)、フリス・ストリート・ギャラリー(ロンドン)
 
一面に広がる灰色の雲越しに、かろうじて識別できる山の輪郭—富士山だ。様々な顔を持ち、文化的・象徴的に計り知れない重要性を持つ火山である。イギリス人女性のメアリーと今は亡きパートナーの日本人男性ヒロシという、架空のふたりの存在の声に映画は導かれていく。ヒロシからの手紙と写真群が入った小包を受け取ったメアリーは、ヒロシが富士登山について語るそれらの手紙によって一連の思索と沈思へと誘われる。そして我々は、メアリーと共に写真を発見する…。
この映画を構成するのは、4,000枚にも及ぶ過去150年の多様な写真だ。特別な写真もあり、息をのむ程までに美しい写真も多々ある。19世紀の日本のスタジオ写真のように古いものがあり、また、1930年台の軍隊のプロパガンダ写真、勝利を誇ったアメリカのメディアが撮った写真から数十年に渡るアマチュアが撮ったスナップ写真までと様々な写真だ。まるで山を覆う雲のように、これらの数千の写真は富士山のその姿を明らかにし、そして同時に隠してもいる。
スチルで構成された本作は、ドキュメンタリーとフィクションの絶妙なバランスを持ち合わせる映像体験だ。ナレーションが話を紐解くに従って、予想外の驚くべき道が開かれていく。観客は地理的、時間的、文化的分断を超えて、ふたりの登場人物と共に富士山を登る。北斎の版画と、ヴァン・ゴッホの絵画、アジアの哲学に由来する哲学的視点、人類の風景との結びつき、富士の山の信仰的な重要性、最近の日本の歴史…といったものをも考察する。
しかし、中心にあるのは、写真というものについてへの問いであり、そしていかにしてミニマムな手法で映画を作ることができるかという挑戦だ。
 

フィオナ・タン

映像や写真を主な表現手段としているアーティスト。アイデンティティ、記憶、歴史を探求する精巧に作られた映像インスタレーションで国際的に知られている。2009年のベネチア・ビエンナーレではオランダ館の代表作家を務めた。作品はテートモダン、ニューヨークのニューミュージアム、グッゲンハイム美術館、アムステルダム市立美術館、ポンピドゥーセンターなどに所蔵されている。初長編監督作品『歴史の未来』は2015年にロッテルダム国際映画祭で上映された後、これまで3つの賞にノミネートしたほか、世界中の映画祭で上映されている。本作は、長編2作目にあたる。ゲッティー・リサーチ・インスティチュートのアーティスト・イン・レジデンスの助成を受け、2016年9月から2017年6月までロサンゼルスに滞在。

 

上映日

東京:4/30 13:45, 5/6 13:45 プログラム N
京都:5/13 16:30 プログラム N
横浜:6/18 11:30 プログラム N
名古屋:6/24 16:30 プログラム N
 
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