プログラム

O ピーター・ハットンへのトリビュート

5作品61分(横浜会場では6作品76分)

 

マノンのための風景 ピーター・ハットン

“僕の映画は映画史において特に重要というわけではない。そういったところから少し回り道したところにある。自然を眺めるのが好きな人や、情報過多でない何かを吟味したいような人に好まれる。僕の映画を観るのはちょっとした白日夢を観るような感じなのだ。”“ 世界の美しさを讃える、静かで原始的なドキュメンタリー(”カイエ・デュ・シネマ)を40年以上作り続け、惜しくも2016年に亡くなった、知られざる巨匠ピーター・ハットンの作品を上映する。
 
謎のヒッチハイカーが3つの石を拾った パシ・スリーピング・ムルマキ/8ミリ(デジタル版)/2分/1979(フィンランド)
ニューヨーク・ポートレート(パート1)ピーター・ハットン/16ミリ/15分/1976-1978(アメリカ)・・・◎
マノンのための風景 ピーター・ハットン/16ミリ/13分/1988(アメリカ)
タイタンの酒杯 ピーター・ハットン/16ミリ/10分/1991(アメリカ)
ウッジ交響曲 ピーター・ハットン/16ミリ/20分/1993(アメリカ)
河についての考察 ピーター・ハットン/16ミリ/16分/1996(アメリカ)
 
◎・・・横浜会場のみの上映(横浜美術館所蔵作品)
 
ピーター・ハットン(1944〜2016)は1970年代初期に最初の映像作品を作り、以来40年以上にわたりリュミエール兄弟がこのメディアを1890年に発明したその瞬間に映画を呼び戻す仕事を行ってきた。
彼の作品はすべてサイレント映画である。大体においてカメラの動きやモンタージュを避けたこれらの映画は、まるでスケッチブックや写真アルバムを思い起こさせるようだ。その作品には、正確にバランスの取れた構成における唯一の動きが気まぐれなそよ風や光のわずかな変化だったりする、幻想的なものも多い。また作品のほとんどが、感覚を楽しませてくれるようなモノクローム作りである。(ハットン自身が色盲気味だった)
1978年、Sightlines誌に対するインタビューの中で、ハットンは自身の作品のことを「自伝としてではない日記式の映画」と称している。サンフランシスコ・アート・インスティテュート在学中に撮った『July ’71 in San Francisco, Living at Beach Street, Working at Canyon Cinema, Swimming in the Valley of the Moon』(71)に始まり、ハットンの作品は場所によって特徴づけられるものが多い。東南アジアや東欧、ソ連、中国、アイスランドのほか、アメリカの都市も数都市ロケ地に使われている。都市シンフォニーシリーズのなかでも最も捉え難くメランコリーな三部作『New York Portrait』は、1970年代後半から1980年代初期に集中的に撮影され、1990年に完成した。
『Budapest Portrait(Memories of a City)』(84-86)は、ハットンの厳格なほどロマンティックな世界観を凝縮させたような作品である。朽ちゆくアパートや巨大な工場の映像が30分続く作品だが、寂しげなスターリン時代のモニュメントや革命の幽霊たちに住みつかれたこれらの場所は、消えゆく栄華や衰退する産業の地を象徴している。人の存在はほとんどなく、大体は写真や影、銃弾の跡などで、距離をおいた形で感じられるだけである。目に見えないドラマの舞台セットのような街だ。
ピーター・バリントン・ハットンは1944年8月24日、デトロイトでドナルド・ハットンと旧姓ドロシー・プランケットの一人息子として生まれた。広告関係の仕事をしていた父は、以前商船で働いていたことがある。この職業が幼少時代のハットンに深い影響を与えた。
Cinemadサイトのインタビューでハットンは、子供の頃父の写真アルバムを見てわくわくしたと話している。後に父の勧めもあり商船で海外に飛び出した。
「商船で働いて美術学校の学費を稼いだんです」とハットンは語る。「一学期は海に出て、その次の学期は学校へ、というふうに海と学校を行ったり来たりしていました」
元々絵描きになろうとしていたハットンは、ハワイで美術を学んだ後、サンフランシスコ・アート・インスティテュートで映画作りを開始。同校で美術の学士と修士号と取得した。
後にハットンはバード大学など幾つかの学校で映画制作を教えた。バード大では映画およびエレクトロニックアーツのプログラムのディレクターも務めた。また主にドキュメンタリー映画や自主制作の長編映画でプロの撮影監督の仕事もした。その時のドキュメンタリー作品に、元教え子のケン・バーンズ監督の『Baseball 』や『The Statue of Liberty』がある。
 

上映日

東京:5/2 16:15, 5/7 11:00 プログラム O
京都:5/20 11:00 プログラム O
横浜:6/18 16:30 プログラム O
名古屋:6/24 14:50 プログラム O 
 

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