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東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション 受賞作品決定!

イメージフォーラム・フェスティバル2022「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」では、日本、中国、台湾、香港、マカオ、韓国から461作品の応募があり、一次審査、二次審査を経て24作品が最終審査にノミネートされました。これらのノミネート作品は本フェスティバルの上映プログラムとして各会場で上映されます。

東京会場の会期中に最終審査員3名による審査会議が行われ、厳正なる審議の結果、以下の通り受賞作品が決定し、9月23日(金)にシアター・イメージフォーラムにて授賞式が行われました。

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 受賞作品+審査員コメント

【 大賞 】
ユーモレスク  磯部真也/デジタル/46分/2022年(日本)

砲撃のような音が遠くから聴こえる荒涼とした広大な自然が広がる架空の場所に生きる息子と母の生活を、ダイアローグを排したミニマムな音設計を施し、腰の据わった素晴らしい撮影が誘うとても豊かな時空を描き出す。作中に示される父の不在と、カメラを通じて仄めかされる父である撮影者とその子どもである被写体という対照が、喪失と親密さというアンビバレントな感情を想起させ、希望、不安、といった過去、現在、未来への間(あわい)へ私たちを包み込む、見事な美しい映画の冒険に心からの賛辞を贈ります。(審査員一同)

 

 

 

【 寺山修司賞 】
メルティング・アイスクリーム  ホン・ジンフォン/デジタル/70分/2021年(韓国)

これは歴史について、政治闘争について、論争の只中を捉えた写真についての映画である。過去だけでなく現在に関わる本作品の題材は、難しいものであり、扱いそのものも難しい。しかしながら、作者は熱意をもって豊かにこの複雑な内容を「どのように描くか」に挑むことができた。単純に言えばこの作品は高い緊急性のある作品であり、熟考を重ねて制作された作品の力を持っており、詩的(ポエティック)なレンズを通して、社会と政治を見つめている。審査員は以上の点をもって本作品が寺山修司賞の精神と響き合うと考えた。(審査員一同)

 

 

 

【 SHIBUYA SKY賞 】
I’m Late  冠木佐和子/デジタル/10分/2021年(日本)

「あなたの身体は戦場です」(バーバラ・クルーガー、1989年)、それはどの時代にも変わらない事実ですが、全ての人が格好良く戦えるわけではありません。作家は自身の体験を切り口に、性、ジェンダー、妊娠、出産、流産などをめぐる、いささかぎこちない対話へ人々を招きます。彼ら・彼女らの正直な話というのは、リアルであるがゆえに必ずしも政治的に正しいものとは限りません。この作品は、ノミネートされた作品の中でベスト・アニメーションとしてよりは、注目に値する同時代の映像実践として選ばれましたが、建前に隠された本音を解き放すアニメーションの力と、率直さという作家の変わらない力が申し分なく発揮されています。(審査員一同)

 

 

 

【 優秀賞 】
亡霊の堆積  エラ・ライデル/デジタル/70分/2021年(台湾)

冒頭の中国にあるエッフェル塔という虚構から始まり、新しい建築と廃墟、不動産ブローカーと俳優、空虚に響くハンマーの音とハリウッド映画のメロドラマから聴こえる音楽、存在しないホテルの宿主と客の擬似恋愛など、亡霊のようなさまざな対称物が堆積し、その多層的な塊こそが脆弱な現実である、というリアリティを辛辣に指し示す。ドキュメンタリーとフィクションの間を深く練った洞察に満ちた編集と音楽設計に感嘆し、独特のリズムを打つ多層的で意欲的な本作に敬意を表します。(審査員一同)

 

 

銀幕  チャイ・チャイベイ/デジタル/14分/2022年(中国)

美しい手作りの、遊びごころにあふれた本作品は、映画でかくれんぼをしているような趣きがある。本作品は、形式と詩の実験であり、映像と言葉、知覚と読解、経験と理解の間の捉えどころのない遊びである。提示されるマテリアルを越えて、あるいはその底に、知覚とコンセプトの可能性の世界が開かれ、観客の精神と感覚と自由に遊戯する。(審査員一同)

 

 

 

終わりの時と祖先の軌跡  エドウィン・ロー・ユンティン/デジタル/34分/2022年(香港)

本フェスティバルのほかの優れた実験的映画と同様、この作品を読み解く方法はひとつではないでしょう。最初に目を引くのは、『Far Cry 5』(2018)というビデオゲームのデジタル風景と、歴史的記録のアナログ素材を重ね合わせた制作の方法論です。人影のない風景や凍結されたかのように見えるイメージとは対照的に、宗教的な讃美歌とネイティブ・アメリカンの証言は生々しく、感情に満ち溢れています。気になるのは、なぜ香港の作家が遠く離れたモンタナの時空間を背景とする作品を制作したかということです。CGで作られた風景とは、いくら写実的であっても結局どこにもない場所ですが、どこにもない場所だからこそ、どこにもなりうる場所ともいえます。そこに考えが至ると、不思議にも現代社会の諸相がこの作品の場面と重なって見えてきます-カルト宗教と日本の元総理大臣の死との関連、進行中のロシアとウクライナの戦争と核の脅威、あるいは……香港の過去と現在まで。(審査員一同)

 

【 東京会場観客賞 】
I’m Late  冠木佐和子/デジタル/10分/2021年(日本)

 

■ 最終審査員

 

濱治佳(山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局長/日本)
イップ・ユック・ユー(映像作家、メディアアーティスト、キュレーター/香港)
馬定延(映像メディア研究者/韓国、日本)

 

 

 

 

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