
「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」には、日本、中国、香港、マカオ、台湾、韓国から過去最多となる計585作品の応募があり、厳正なる一次および二次審査のもと、以下の20作品がノミネート選出されました。また新設部門「ジャパン・エクスペリメンタル」には、以下の5作品が選出されました。
これらの作品はイメージフォーラム・フェスティバル2026の各会場で上映されます。東京会場の期間中に最終審査員による審査が行われ、最終日に入賞6作品が発表されます。

月世界のアマチュア
ホアン・パンツアン+リン・ジュンニー / デジタル / 22分 / 2025(台湾・日本)
アマチュア映画作家・吉川速男がフリッツ・ラングの『月世界の女』に触発され、SF映画制作を志すというエピソードを軸に、戦前の日本と台湾のアマチュア映画の世界を描く。作品の多くは戦火で失われたが、本作の二人の作家は復刻された9.5ミリフィルムで全編を撮影。小型映画にかけた青年たちの情熱を鮮やかに蘇らせる。

曲水
シェン・リンズー / デジタル / 21分 / 2026(中国本土)
同じ川辺を舞台に、1952年、1983年、1995年という異なる時代を生きる人々を描く。長回しの横移動撮影によって時間を運ぶ絵巻物のように風景が展開し、川へ飛び込む女性と一匹の魚のイメージが時代を超えて記憶をつないでいく。「蘭亭序」の引用もまた、悠久の時の流れと人生の儚さを静かに浮かび上がらせている。

緑の親玉
帯谷有理 / デジタル / 30分 / 2026(日本)
1990年代より個人映画の分野でユニークな実験的作品を発表してきた帯谷有理の最新作。街角でトイピアノを弾き ”テンテン” を探す男に邂逅した「私」は……。作者の代名詞といえる作り込まれた音像と全編主観ショットで貫かれ、観客を奇妙な日常世界へといざなっていく。田畑を突っ切る一本道のロングテイクに注目。

コンパクト・ディスク
リコ・ウォン / デジタル / 39分 / 2026(香港 / イギリス)
香港民主化デモに当時16歳で参加し逮捕された青年たち。月日を経て親友同士再び集まった彼らは、自分たちにカメラを向け、当時の記録を収めたコンパクト・ディスクを再生する。しまい込んでいた記録/記憶を直視することの困難と向き合い、移ろいゆく社会と若者たちの現在地を率直に提示した、パーソナルなドキュメンタリー。

蟲のいどころ
山田沙奈恵 / デジタル / 34分 / 2026(日本)
地震をもたらすとかつて信じられていた鯰は、世直しの象徴としても描かれた。閉塞感とカタストロフィーの予感が両義的に満ちる現代日本社会の感覚を<災害と復興>の政治学を通して描出する饒舌なエッセイフィルム。人間的スケールを超えた地学的・歴史的なマクロな視点は、本作家のIFF2018ノミネート作品『With Friction, As Friction』とも共通する。

透明列車
リア・チャン・ルーウェン / デジタル / 4分 / 2025(中国本土 / 香港)
車窓の外に広がる夜景に立ち並ぶビルの影、疾走する列車の連続する明るい窓……。浮遊感のある夢が増殖し、映画の初源的イメージと近代都市の風景が交感しながら観客の記憶を刺激する。影絵を使ったハンドメイドな手法が、作品の世界観に情感を加える夢幻的ファントム・ライド。

韓国で一番おもしろいホームビデオ
キム・クッキ / デジタル / 15分 / 2025(韓国)
“ホーム”が、まともに存在しなかった生い立ちの作者。あえてホームビデオを撮ろうと決意し「唯一の家族」である祖母に会いに行く。イメージの不在を、購入した2010年代の中古デジタルカメラの粗い映像と生成AIで埋めていく。SNS投稿文化のフィルターにかけ、極めてパーソナルな個人の物語が “ストーリー” 化され2010年代以降のメディア史と反響する。

リキュール
イーチェン・ホアン / デジタル / 5分 / 2025(台湾 / ドイツ)
病に侵された母を救うため、娘は母の体内から出たへその緒でできた巨大なストローで、母の頭の中に溜まった水を取り出そうとする。しかし、母の姿は消え、娘自身が水の中へと沈み、記憶の海をさまようことに。母と娘との関係を想像力豊かに、力強いイメージで描いた作品。2026年オーバーハウゼン国際短編映画祭上映作品。

ちいさなうりぼう
和田淳 / デジタル / 4分 / 2026(日本)
世界の四大アニメーション映画祭にノミネートされるなど、国際的に活躍するアニメーション作家・和田淳の新作。独特の「間」と、心地よい動きは本作でも健在だ。走ってはものにぶつかっていく「うりぼう」に、散歩中の犬、組体操の少年たち、コンビニでもめる人々などが絡み合い、日常の風景は奇想天外に変貌していく。

新しいおうちにチュ!
幸洋子 / デジタル / 11分 / 2025(日本)
災害により家と飼い猫を失うかもしれないという不安に包まれていた幼少期の記憶を元にした作品。児童文学を思わせる台詞回しと軽快で賑やかな物語の展開に、イラストや切り絵など多彩な手法を織り交ぜる作者独自のスタイルが見事にマッチしている。手作業の温もりに満ちたアニメーションに猫への深い愛情があふれて見える。

オー・バレンタイン
ホン・ジンフォン / デジタル / 92分 / 2025(韓国)
2004年2月、韓国現代重工業で下請け労働者パク・イルス氏が焼身自殺を図った。経済危機の余波で急増した非正規雇用をめぐる労働争議が激化する中、彼の死は更なる闘争を引き起こした。韓国美術家賞2026にも選出され注目される作者が、IFF2022受賞作『メルティング・アイスクリーム』に続く最新作として発表。砕かれた革命のその後を見つめる。

録画
チャン・モーイン / デジタル / 12分 / 2026(中国本土)
親に言われるがまま一流大学の前で将来の進学を誓う、年端もいかぬ女の子たち。子の幸せを願う親が思い出に残したはずのホームビデオが、子の視線を介して、親のエゴやその背後に潜む社会構造を映し出すアーカイブと化す皮肉。作者自らの幼年期のホームビデオを編集した本作は、ブラックユーモアか、子のささやかな復讐か。

赤地をゆく牛たち
カイウェン・レン / デジタル / 27分 / 2025(中国本土)
夜の暗がりに浮かび上がる動物や人影、失われた人の気配を感じさせる室内の風景——。色調の抑えられた16ミリフィルムのフッテージに、白光が歌うかつての中国の流行歌「魂縈舊夢」や様々なノイズ音がコラージュのごとく重ねられる。私信のような欠落したテキストの断片が、不安に満ちた複雑な情感を呼び起こす。

宵星の歌
アイリス・サン / デジタル / 23分 / 2026(中国本土)
夜のロサンゼルスをさすらう男。その耳に響き始める鳥の声は、やがて街の光を小鳥の群れへと変えていく。かつてこの地に広がっていた大自然は、いまやビル群の下に消えた。鳥の歌は、失われた風景の記憶を呼び覚まし、この土地に刻まれた歴史を静かに浮かび上がらせる。都市と自然、現在と過去が交錯する幻想的な映像詩。

チャタギル・ポッターはかく語りき
ティン・チーウェン / デジタル / 22分 / 2026(台湾)
死から蘇ったポッター神父は、人と人ならざるものの狭間で「この世」を見つめ直す旅に出る。生前告解室で他人の問いに答えを与えてきた神父が、肉体を失って「人間とは何なのか」という実存的な問いと向き合う。ファウンド・フッテージや生成AIの映像素材を巧みに織り交ぜ、「非人間」の視点も踏まえその問いを際立たせるポストAI・シュールレアリズム映画。

魔神仔がいる場所へ、それでも帰りたいの?
チエン・マンチュン / デジタル / 30分 / 2025(台湾)
空港の拡張によって、亡き母との記憶が刻まれた実家を失うことになった作者。母の死と、時に人をさらうという台湾の妖怪「魔神仔(モシナ)」のイメージが重なる。ノート、母の服、作者による絵画など、母の不在を映し出すものを通して、作者の喪失感や残された父との関係が綴られる。プライベートドキュメンタリーの秀作。

雲は過ぎ去り雨は降らず
スー・ユーシン / デジタル / 14分 / 2025(台湾)
自動運転の車から撮影される、AI処理と半導体生産の地となったアリゾナの砂漠の風景。そこに広がるのは水の無い自然環境に生まれた、水を大量に消費する産業が形づくった非現実的なテクノ・ユートピアだ。サウンドトラックに重ねられた砂漠の民トホノ・オーダム族の雨乞いの歌が、人間の叡智とは何かを問いかける。

風隙
チョンルー・シンユェン / デジタル / 30分 / 2026(中国本土)
惰性で付き合っていたパートナーとの間で予期せぬ妊娠をしてしまったミンは、中国ベトナム国境を目指してひとり当てもなく旅に出る。霧深い山間地帯で夢と現の間を彷徨う主人公の寄る辺なさを、全編広角カメラの特徴的なロングショットで捉えた。現代中国社会に生きる若者の心の機微を描いた、オフビートなロードムービー。

シャオガオは結局一人で老いていく
ガオ・ジュンイェン / デジタル / 8分 / 2025(中国本土)
いわゆる ”ミレニアル世代” と ”Z世代” の間で宙ぶらりんの主人公・シャオガオは、友人や家族、恋人との関係をこじらせながら、結婚や出産をめぐる社会からの重圧にもなんとなく押しつぶされそうで……。作者自ら監督&主演を務め、自身の経験を土台とした物語を、リズミカルで奇想天外な場面展開によってコミカルに描いた。

走
ウー・ハナ / デジタル / 4分 / 2025(台湾 / イギリス)
母親の古い中英辞典から「走(歩く)」という文字をめぐる思考が始まる。インクの描線やフィルムへのダイレクトペイントによって、「走」という文字や、想起されるイメージが次々と現れ、歴史的な意味から個人的な記憶まで、様々に姿を変える。言葉とイメージの間をさまよいつつ、世界を知ることについて思索する実験的作品。

feeling together 共在
ふくだぺろ / デジタル / 25分 / 2026年(日本 / ルワンダ)
暗闇の中、怒号と悲鳴が沸きあがる。激しく罵り殴り合う男女へと向かっていくカメラ。騒動は周囲の村人を巻き込んで広がっていくように見えるが、やがて諍いの当事者は歌い出し、怒りが集団の踊りへと伝染していく。強烈なワンショットの映像を通し、撮る者と撮られる者、そしてそれを見る者=観客がとり結ぶ関係性について問いかけるドキュメンタリー。

冬の実
竹原結 / デジタル / 9分 / 2026年(日本)
認知症になった祖母と過ごすささやかな日常が、写真や映像を織り交ぜた暖かなアニメーションで綴られる。「記憶とともに愛情も消えてしまうの?」少しずつおぼろげになってゆく祖母の世界に、「私」の居場所を探し求める。同作者のIFF2023ノミネート作『mom is どこ』から一貫し、記憶や家族をめぐる主題を丁寧に表現した。

Our Times
ソネソラ / デジタル / 10分 / 2026年(日本)
フィルムの多重露光による撮影が、青空と緑に包まれた平穏な風景の中で行う登場人物たちの行為に小さなズレを生んでいく。そのズレは日常の新しい“別の”可能性を示すのか、あるいは繰り返される日常という逃れられない限界を示すのか。ポエティックなテキストとアナログフィルムの温かい手触りで綴られる、現実に対する希求。

眠る眼
宮川卓也 / デジタル / 12分 / 2026年(日本)
空から舞い降りてくる黒い物体は、”モノリス” ならぬスマートフォンである。現代社会を侵食する視覚情報の洪水に、読む・見ることの自由を奪われた人間は、やがてその身体さえも記号化され、デジタル変換されていく。ゲームエンジンや3Dキャプチャ、視線追跡技術を用い、日常の風景を風刺的に描き出すことに挑戦した。

Teteu
磯部和弥 / デジタル / 53分 / 2026年(日本)
インドネシアの西スマトラの森に生きる少年“ジャブジャブ”を静謐な映像で追うドキュメンタリー。森と共生する伝統的な生活を選ぶ先住民たちは、外からの開発による影響を受け、否応ない変化へと巻き込まれていく。都市へ出て学校に通う少年の姿と、森での暮らしの様子が端整なモノクロとカラーの映像で対比される。
※英語タイトルのアルファベット順に掲載。
※( )内は作者の出身地/在住地。同一の場合は省略。
イメージフォーラム・フェスティバルは作家性、芸術性、創造性の高い映像作品を世界中から集めて上映する日本最大規模の映像アートの祭典です。前身の「アンダーグラウンド・シネマ新作展」(1973〜)と「実験映画祭」(1981〜)の流れを引き継ぎ、より国際的な内容と作品の一般公募を盛り込んで1987年にスタートした本フェスティバルは、今年で39回目の開催となります。日本における先鋭的な若手映像作家の登竜門として知られてきた一般公募部門は、山村浩二、河瀨直美、井口昇、石田尚志、和田淳といった、現在国際的に活躍する映像作家、アーティストの作品が過去に入選しています。2018年に、それまで国内に限定していた一般公募部門(旧名称「ジャパン・トゥモロウ」)の募集範囲を拡大し、「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」がスタートしました。東アジアの国際間における相互の交流と刺激によって、これからの芸術表現を模索し、メディア環境を含めた社会のあり方について考える場を創出します。
また本年からは、新部門「ジャパン・エクスペリメンタル」を開設し、日本のエクスペリメンタル・シーンの更なる可能性を提示します。
昨年度の開催:イメージフォーラム・フェスティバル2025
昨年度受賞作品、審査総評
一次審査を経て決定されるノミネート作品(約20本)は「イメージフォーラム・フェスティバル2026」で上映され、最終審査によって以下の賞が授与されます。また観客投票によって選ばれた観客賞(各1点)を会場ごとに発表します。
また、一次&二次審査通過作品の中から新しい映像表現に斬り込む作家性の高い日本作品を選出し、本フェスティバルの「ジャパン・エクスペリメンタル」プログラムで上映します。「ジャパン・エクスペリメンタル」部門も同じく最終審査によって優秀作品1点に下記の賞が授与されます。
・大賞/1点 賞金30万円、賞状
・寺山修司賞/1点 賞金10万円、賞状
・優秀賞/3点 賞金3万円、賞状
・ジャパン・エクスペリメンタル賞/1点 賞金3万円、賞状
さらに国内外の映画祭やメディアアート・フェスティバルなどにおける選考対象作品としてイメージフォーラムが推薦するほか、イメージフォーラムが国際映画祭等に提供するプログラムの中で上映されることもあります。
[ 過去10年以内に上映プログラムを提供した国際映画祭、教育機関 ]
– モスクワ国際実験映画祭(モスクワ/ロシア)
– 広州時代美術館(広州/中国)
– 国立アジア文化の殿堂(光州/韓国)
– EXiS(ソウル/韓国)
– ジャンピング・フレームズ 香港国際舞踏映像祭(香港)
– 南方影展(台湾)
– バリ国際短編映画祭ミニキノ・フィルム・ウィーク(バリ/インドネシア)
– ワッタン映画祭(ヤンゴン/ミャンマー)
– シーショーツ映画祭(ペナン/マレーシア)
– タイ短編映画祭(バンコク/タイ)
– アナーバー映画祭(ミシガン/アメリカ)
– ビンガムトン大学(ニューヨーク/アメリカ)
– カリフォルニア芸術大学(カリフォルニア/アメリカ)
– フェスティバル・アクセス・アジー(モントリオール/カナダ)
– バンクーバー国際映画祭(バンクーバー/カナダ)
– ベルギー王立シネマテーク(ブリュッセル/ベルギー)
– ロッテルダム国際映画祭(ロッテルダム/オランダ)
– セルビア学生センター(ベオグラード/セルビア)



イメージフォーラム・フェスティバル2026
■日程・会場:
【東京】
会期:9月19日(土)〜9月25日(金) (予定)
会場:シアター・イメージフォーラム
主催:イメージフォーラム
以降、地方巡回予定
■メインプログラム:
東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション
ジャパン・エクスペリメンタル
エクスペリメンタル・パノラマ
フィルム・メーカーズ・イン・フォーカス
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