「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」ノミネート作品決定!

「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」には日本、中国、香港、マカオ、台湾、韓国から計442作品の応募があり、厳正なる一次および二次審査のもと、以下の16作品がノミネート選出されました。ノミネート作品はイメージフォーラム・フェスティバル2024の各会場で上映されます。東京会場の期間中に以下の最終審査員3名による審査が行われ、最終日に入賞作品が発表されます。

「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」 ノミネート16作品

コクーン
イウェ・チェン / デジタル / 5分 / 2024年(中国本土 / イギリス)
どこか遠い記憶を呼び起こすかのような気配に満ちている。暗い一室の中、TVが光っている。映されているのは一匹の蛾である。蛾は卵を幾つも産むとブラウン管を飛び出し、卵もいつしか部屋のあちこちへと移っている。幼い少女がその卵に触れると–––。蛾をモチーフに、少女の不安げな一夜を淡いタッチで描くドローイング・アニメーション。

DESK BUGS
キム・ハケン / デジタル / 3分 / 2024年(韓国 / 日本)
紫でふわふわの「デスクバグス」を中心に、赤い机、黄色い犬、ガイコツ、モジュラーシンセのケーブル……、あらゆるものが作者自身による音楽に合わせて縦横無尽に踊る! 映画フィルムに直接描いたような、あえて小さな絵を素材にしたことでダイナミックな描線と色の動きが生まれた。アニメーションの楽しさに満ちた1本。

遠い声
伊藤 高志 / デジタル / 53分 / 2024年(日本)
一面朽ち果てたひまわり畑、廃墟と化した公営住宅群–––。息を呑むような殺伐感が作品全体を覆う。互いが分身のような二人の女。カメラを持って彷徨し、一人は不可思議な事物や自分にカメラを向け、一人は黒いワンピースをさまざまな場所に吊るして撮る。日常的風景と非現実的風景が一瞬にして交差する“映画の魔術”に満ちた作品である。

誰もおらん家
北川 未来 / デジタル / 15分 / 2024年(日本)
今は誰も住むことのなくなった、祖母が暮らしていた家。縁側や居間に窓から差し込む太陽の光の温かみや、時折聞こえる祖母が好きだった電車の音が郷愁を誘う。やがて日が暮れると「可愛がっていた猫のじろちゃん」が現れ、家の中を闊歩する。コマ撮りや合成を駆使し、静謐な空間に命の痕跡を宿していく、祖母を偲ぶ心情に溢れた作品。

私があなただったら
フローレンス・ラム+チャン・ジーウン / デジタル / 30分 / 2024年(香港)
恋人同士であるパフォーマンス・アーティストのフローレンス・ラムと映像作家のチャン・ジーウン(『乱世備忘 僕らの雨傘運動』『Blue Island 憂鬱の島』)が、それぞれのトラウマとなっている経験を演じあう。女性のジェンダーと身体にまつわる痛みの記憶と、香港の運動の苦しみの記憶。決定的に異なる二つの存在は、歩み寄りお互いの立場を理解しあうことができるのか。“その後の香港”の閉塞感が、観るものに重くのしかかるパーソナル・フィルム。

蒸発書簡
工藤 雅+張 若涵 / デジタル / 30分 / 2024年(日本+台湾)
台北と東京に住む二人の作家による映像往復書簡。コロナ禍で実際に会うことが難しい状況下で開始され、2024年まで続けられた。互いの映像や音を引用しつつ展開していくが、アニメーションやコラージュ、8ミリフィルムによる撮影など、さまざまな技法を駆使した映像は「これぞ個人映画!」という楽しさに彩られている。

Tへの手紙:核の中で私たちは繋がっている
ジャン・ズム / デジタル / 21分 / 2023年(香港)
ビデオレターの体裁をとりながら、中国における核実験及びその視覚イメージを検証する、資料映像を駆使した映像エッセイである。中国は1964年10月16日、新疆のロプノールで最初の核実験を行ったが、それを伝える映像には幾つもの“不純”が内包されていた。歓喜する兵士たち。だが、その映像には“裏”があったのだ–––。

恋愛のディスクール
パン・ブン / デジタル / 14分 / 2024年(中国本土 / 日本)
カフェで斜向いの席につきボードゲームに興じるカップル。ぎこちない接触の試み、交差することのない視線。批評家ロラン・バルトが種々のテクストを引用し断章形式でまとめ上げた同名著作を下敷きに、縛られない自由な発想で恋する主体である"わたし"の内的世界を詩的なイメージで展開させたドローイングアニメーション。

みじめな奇蹟
折笠 良 / デジタル / 8分 / 2023年(日本)
画家・詩人のアンリ・ミショーによる、彼自身のメスカリン体験を綴った同名エッセイとドローイングに着想を得たアニメーション作品。リズミカルに朗読される詩と、そのイメージを現前させるようなイラストレーションの運動が画面に臨場感をもたらしている。第47回オタワ国際アニメーション映画祭短編部門グランプリ受賞。

クイーンのかぎ針編み
チョ・ハンナ / デジタル / 35分 / 2023年(韓国)
ハンナは幼少期に祖母のチュンザからかぎ針編みを習った。自身のセクシュアリティに疑問を抱きつつ育ったハンナにとって、かぎ針編みは単なる少女の趣味ではなく、己と向き合うためのルーティーンだった。成長し、かぎ針編みの集大成として「マンダラ・マッドネス」を編み上げたハンナが迎える、驚きのエンディングに注目!

共和国
ジン・ジャン / デジタル / 107分 / 2023年(中国本土)
音楽の鳴り響く6畳ほどの狭い部屋にたむろする若者たち。酒を飲み、ギターを弾き、理想を語る……。ここは抑圧的な現実社会から離れて気ままな生活を送るための"共和国"だ。透明人間のように存在するカメラが活力に満ちた若者たちの姿を捉え、大胆な編集とともに「自由と抵抗」というテーマを鮮やかに浮かび上がらせる。

家の記号論
チェン・ションイー+リン・イーピン / デジタル / 8分 / 2023年(台湾+アメリカ)
山積みとなった家屋の解体ゴミ置き場。その前にポツンと置かれた机と椅子。食事を用意するのは人間ではなく工事用のショベルカーである。我々の住居=生活を作り出す重機が、料理、洗濯など人の仕事を演じることで、その本来の役割から解き放たれていく–––。マーサ・ロスラー「キッチンの記号論」(1975)を想起させる作品。

上海動物園
リ・ユェン / デジタル / 14分 / 2023年(中国本土)
美術館の暗がりの中、ホワイトキューブの壁に映し出されたある映像作品。おもむろに立ち寄った観覧客の女性が見入っていると、美術館スタッフの女性が声をかける。捉えどころのない二人の対話。「この主人公、少し私に似ているみたい」。重なり合うイメージを行き来しながら、存在の不確かさを描き出すポエティックな一篇。

彼女は渡った
デイジー・ズイェン・ジャン / デジタル / 18分 / 2024年(中国本土 / アメリカ)
コロナのロックダウン中、異国の地アメリカで学ぶ作者は、学生寮で掃除人として働くコロンビアからの移民女性に出会う。二人の眼差しは、人工の建造物をはみ出て葉と根を伸ばす植物たちに惹きつけられる。あの娘は旅立った。彼らも旅立った。そして人生は続いていく。現地の人に気もとめられない移民二人の、ささやかだが暖かい交流がフィルムの質感で情感豊かに込められた。

ずっと前、そう遠くないところ
ヤン・ワイイン / デジタル / 3分 / 2024年(香港)
スーパー8で捉えられた2019〜2023年の香港の日常風景。その四隅には19世紀刊行の英単語集「華英通語」から引用された英単語と直訳(左上下)、発音を示す広東語と更にその再英訳(右上下)が配置され、混沌とした意味のズレが生じていく。香港の"現在"を見つめるパーソナルな視点を実験的手法で表現した一作。

「解体」映像記録
持田 敦子、青山 真也 / デジタル / 50分 / 2024年(日本)
日頃スポットライトの当たらない建物の"解体"。その現場では速やかに更地に戻すことが常識とされる。そこに持田敦子の"アート"が、「豊かな解体」を掲げて別の時間軸・価値で介入していく。その行為が解体業者など、現場や周囲の人々を触発していく様子をインタビューや取材を通し丁寧に捉え、"アートと社会の結節点"が描出されていくドキュメンタリー。
※英語タイトルのアルファベット順に掲載。
※(  )内は作者の出身地/在住地。同一の場合は省略。
 

「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」最終審査員

エリサ・ウェンディ
(映像作家、アーティスト、キュレーター)

木船 園子
(映像作家)

レスリー・レイモンド
(アナーバー映画祭
エグゼクティブ・ディレクター)


 

イメージフォーラム・フェスティバル「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」とは?

イメージフォーラム・フェスティバルは作家性、芸術性、創造性の高い映像作品を世界中から集めて上映する日本最大規模の映像アートの祭典です。前身の「アンダーグラウンド・シネマ新作展」(1973〜)と「実験映画祭」(1981〜)の流れを引き継ぎ、より国際的な内容と作品の一般公募を盛り込んで1987年にスタートした本フェスティバルは、今年で37回目の開催となります。日本における先鋭的な若手映像作家の登竜門として知られてきた一般公募部門は、山村浩二、河瀨直美、井口昇、石田尚志、和田淳といった、現在国際的に活躍する映像作家、アーティストの作品が過去に入選しています。2018年に、それまで国内に限定していた一般公募部門(旧名称「ジャパン・トゥモロウ」)の募集範囲を拡大し、「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」がスタートしました。東アジアの国際間における相互の交流と刺激によって、これからの芸術表現を模索し、メディア環境を含めた社会のあり方について考える場を創出します。

▶ 昨年度の開催:イメージフォーラム・フェスティバル2023
▶ 昨年度のノミネート作家インタビュー
▶ 昨年度受賞作品、審査総評

 

ノミネートされると?

一次審査を経て決定されるノミネート作品(約25本)は「イメージフォーラム・フェスティバル2024」で上映され、最終審査によって以下の賞が授与されます。

 ・大賞/1点 賞金30万円、賞状
 ・寺山修司賞/1点  賞金10万円、賞状
 ・優秀賞/3点 賞金3万、賞状
 ・観客賞/1点 賞状

さらに国内外の映画祭やメディアアート・フェスティバルなどにおける選考対象作品としてイメージフォーラムが推薦するほか、イメージフォーラムが海外映画祭等に提供するプログラムの中で上映されることもあります。

[ 海外上映プログラム提供歴 (2021年〜) ]
・2021年8〜10月/ロシア/The 6th Moscow International Experimental Film Festival
(IFF2018〜2020ノミネート作品より12作品を上映)

・2021年9月/インドネシア/Bali International Short Film Festival MINIKINO FILM WEEK 7
(IFF2020ノミネート作品より8作品を上映)

・2021年9月/マレーシア/SeaShorts Film Festival 2021
(IFF2020ノミネート作品より4作品を上映)

・2021年10月/アメリカ/カリフォルニア芸術大学 REDCAT
(IFF2012〜2019ノミネート作品ほかより12作品を上映)

・2021年12月/ミャンマー/Wathann Film Festival #10 online screening
(IFF2019、2021ノミネート作品より5作品を上映)

・2022年1月/中国/VCD x Image Forum 2022 Winter Collaboration
(IFF2020、2021ノミネート作品より12作品を上映)

・2022年1月/インドネシア/Slow Forward #4 by Indeks
(IFF2019〜2021ノミネート作品より6作品を上映)

・2022年1 月/ミャンマー/LIGHTS FROM THE UNDERGROUND by 3-ACT
(IFF2015〜2021ノミネート作品より5作品を上映)

・2022年5月/カナダ/Festival Accès Asie
(IFF2021ノミネート作品より5作品を上映)
 

日程・概要

イメージフォーラム・フェスティバル2024

■日程・会場:
【東京】
会期:10月12日(土)〜10月18日(金) (予定)
会場:シアター・イメージフォーラム
主催:イメージフォーラム
以降、地方巡回予定

■メインプログラム:
東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション
エクスペリメンタル・パノラマ
フィルム・メーカーズ・イン・フォーカス
 


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