イメージフォーラム・フェスティバル2023「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」では、日本、中国、台湾、香港、マカオ、韓国から400作品の応募があり、一次審査、二次審査を経て32作品が最終審査にノミネートされました。これらのノミネート作品は本フェスティバルの上映プログラムとして各会場で上映されます。
東京会場の会期中に最終審査員3名による審査会議が行われ、厳正なる審議の結果、以下の通り受賞作品が決定し、10月6日(金)にシアター・イメージフォーラムにて授賞式が行われました。

>> 写真左から:遠藤麻衣子さん(最終審査員)/マーク・トスカーノさん(最終審査員)/許願監督(SHIBUYA SKY賞)/能瀬大助監督(優秀賞)/保坂健二朗さん(最終審査員)

冒頭に登場するスフィアー・球体を手に取ってぐるぐる回しながら、その世界を見ているようでした。その中はラビリンスであり、時間の流れもよくわからない、ぐるぐるする中で、真のデリバリーダンサーだけがその世界に亀裂を入れることができます。その世界から抜け出し、ぐるぐるした輪廻を断ち切るためには、自己の消滅が必要となる。現在のテクノロジーを使い新しい表現方法を模索しつつも、その中で語られる物語はとてもクラシックで詩的なものと思い、寺山修司賞に相応しい作品かと思いました。(審査員一同)
強烈にクリエイティブなアニメーションの手法を使った本作は、多様でピッタリとはまったサウンドトラックを使い、スペクタルに富んだ、ドラマチックな若者の恋愛感情が、やがてより陰湿なものへと変化していく様子を表現する。色彩と素材の使い方はユニーク且つ効果的で視覚的な驚きと創造性に満ち溢れ、作品内のテーマの感情的な繋がりは作者によって色鮮やかに共振している。(審査員一同)
かつらが、戦後アジアの経済発展に深く関わっていたという、おそらくほとんどの人が忘れていた事実を取り上げる本作は、すべてを事実として見せることも容易な映像において、「どうもフィクションに見える」というシーンを適宜挿入することで、私たちが期待する物語とは、まさにそうしたいかがわしさも持つものなのだと教えてくれる。私はこの作品を通して、リサーチ・ベイスド・アート・ウィズ・フィクションとでも言うべき手法の有効性に気づかされた。監督には、インスタレーション単独の作品もあり、本作も香港ではインスタレーションとして展示されている。今後は、観る者の身体にもっと訴えかけてくる作品が生まれることを期待している。(審査員一同)
”完全な人間”というアイロニカルなテーマを取り上げた1968年の映画を、教師なし機械学習(unsupervised machine learning)という、常にパーフェクトであることが期待されているAI技術を用いながら、ヴィジュアル的にトランスレート(あるいはパラフレーズ)することで、完全性や人間性を問い直すという構造自体が素晴らしい。オリジナルとの比較やプロセスの確認ができないと作品の真意が伝わりにくいという弱点を補ってあまりある魅力は、モノクロームであり、かつまた、触覚性すら感じるイメージのテクスチャーに由来するのだろうか。映像の更新に果敢に取り組む作家の作品の今後が楽しみである。(審査員一同)
スケールの練習は退屈です。けれどこの映像を見ていると、それをやっている自分自体がやっぱり尊いことなのかも、なんかこんな草原でこんなのどかにどこかの誰かが存在してる、のは私たちの地球であることなんだなあなんて少し暖かい気持ちでいると、その天からの目のからくりに気付かされてなんともいえない気持ちのまま置いていかれるのがたのしい作品でした。(審査員一同)

遠藤麻衣子(映画監督、アーティスト/日本)
保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター(館長)/日本)
マーク・トスカーノ(キュレーター、映画保存家、アカデミー・フィルム・アーカイブ/アメリカ)
